契約書作成を行政書士、弁護士などの専門家に新規で依頼する場合にその方が依頼に見合う人なのかどうか見分けるためのツボを以下に書く。
1. 契約書の作成、レビューは慣れと経験 – 数をこなしているほうが強い
依頼するときは、その専門家にどのくらいの数を経験したか聞いてみるといい。
トラブル処理や、法律相談同様、契約書というのは、数をこなさないと、どこがポイントか、こう修正したら相手がどう出てくるかの想像がつかないもの。会社の法務顧問をやっている以外、それほど専門家に依頼はこないし、法務顧問をやっていたとしても、普通の会社の法務がこなすほどの量は外部には依頼しないと思われる。
一方、会社の法務部で働いていると、どんなに小さな会社でも、二日に一回位は契約書の相談を受ける。そうすると1年に120種類位は経験することになる。私がいた会社で一番大変だった時は、英文含め、一日に2種類の新しい契約書依頼がきて、5つの修正した契約書が戻ってくるようなときもあった。のべで計算すると、1年で1,800種類、経験年数10年強。ここまでくると、種類・文言大体見覚えがあるので、怖いものなし。
2. 業界事情がわからないと契約書はドラフトもレビューもできない
専門家に依頼する際には、経験業種を聞いたほうがよい。
行政書士なら、許認可=風営・建築、在留=入管、会社設立=会社法、とある程度自分の得意分野をもっていて、その分野の法律には詳しいと思われるが、弁護士だとなかなかわかりにくい場合が多い。今の新司法試験合格して弁護士になった方々は、大手の弁護士事務所で地味だけど相当量をまかされるアソシエイト経験がないまま事務所設立ー顧客対応されている方も多いと思う。
業界の慣習、歴史的に使われている雛形、専門用語、などはなかなか外の人間には理解できないもの。NDAに、リバースエンジニアリング、逆アッセンブル、逆コンパイル禁止とあるのは、IT業界にいれば誰でも知っている常識だが、この常識をが知らなければ、この文言を入れたNDAを作成することもできない。具体的にこの文言ご存知?と聞いてみるのもひとつのやり方。
3. コミュニケーション上手な専門家は契約書作成・レビュー能力も秀でている
上記二つに加えて、交渉を必要とする契約書は、ぜひコミュニケーションもスムーズな専門家に依頼することをお勧めする。
法務担当や、弁護士には、お勉強はできるし、仕事もちゃんとするけど、コミュニケーションがいまひとつ、という人がかなりいる。そういう人が契約書を作ると、相手がどう出るかを考えないで自分の思う理想型を契約書に反映させるので、締結が遅れる可能性がある。
たとえば、クライアントに有利な契約書を作って欲しいと依頼した場合、そのとおりに有利な項目ばかりを入れたら、相手方がそれに対抗する文言に修正して返してくるのは明らかである。この契約書を見た相手がどう思うかを考え、あまりリスクを負わない条文は、相手にも同等の権利を与えるような条文にするとか、妥協点をあらかじめ考えた文言を入れることは、経験、知識とともに、交渉能力の持ち主でないと出せないワザである。
実際に契約交渉(契約書のやりとりだけでなく、相手と会ったり、電話で会話したり)をどれくらいやったことがあるかを聞いてみるとよいと思う。
4. 番外編 – ツイッターの「#契約書クソコメGP」を読んで苦笑できる人
契約書クソコメGPは、実際に企業の法務部門に勤務する人たちが、相手から戻ってきた契約書のコメント、修正内容をツイートしたものシリーズ。これ、企業法務や契約書作成・レビュー経験者なら、「あるある」状態で、これ読んで共感してストレス解消しているのだが、経験なければ笑えないはず。ちょっと見せてみて、どういう反応が返ってくるのか、ぜひお試しを。