前にも書いたが日本の在留資格は後から付け足された資格が多くなってきていてどんどん複雑になっているし、オーストラリアみたいにオンラインでチャートの質問に答えていけば、自分にあった資格にたどり着くようなシステムはない。在留資格についての素人がホームページを見ても多分理解不能である。ましてや、英語の詳細説明がホームページにはなく、外国人に理解できる代物では全くない。だから、申請取次(カードがピンクなので、ピンクカード保持者という)という資格を持つ行政書士や弁護士に依頼するという流れになるとしたらありがたいと思わなければならないのかもしれないが、最近の追加追加の勢いにはこちらもついていくのがやっと、というのが正直なところ。今回は、言葉は似ているが、それぞれ違う意味を持つ3つの資格について、自分自身の備忘録(他の行政書士が書いたウェブを見てもどうも曖昧ですっきりしないし)もかねて日本語と英語で書いてみたいと思う。
労働力の不足する特定の産業分野に外国人を受け入れるために今年2019年4月から開始された資格。特定産業分野について相当程度の知識又は経験を持つ外国人向けの「特定技能1号」と、特定産業分野に属する熟練した技能を持つ外国人向けの「特定技能2号」に分かれる。特定技能1号は、技能実習で来日し、無事に終了した外国人は試験免除で募集への申し込みが可能。技能実習を受けたことがない外国人が特定技能1号に申し込むためには、1. 日本語の試験でN4を取得、2. 申請する産業分野別に設定する技術試験に合格、という二つのハードルがある。特定技能2号は、熟練した技能者という位置付けなので、特定技能1号の上に位置する資格である(と法務省の資料を見ても書いてある)が、申請に関する具体的な要件は資料にもホームページにも今の所書いてない(ように思われる)。つまり、技能実習→特定技能1号→特定技能2号 と右に行くに従って技術的なレベルは上がっていくことはわかるが、2号の技能のレベルとか具体的な要件については特定技能1号がある程度定着してから策定するのではないかと思われる。現状、この矢印の途中、技能実習者ではないものが、特定技能1号として働こうにも、日本語の試験でN4レベル取得というのはそんなに簡単ではないらしいし、技術の試験はまだ2業種でしか実施されてなく、しかも、海外ではまだほとんど実施予定もないらしい。要は、技能実習という、日本で実習したことを国に帰って生かしなさい、というのが目的であった(が、単純労働を安い賃金で請負ってもらっていただけで仕事を教えてはいない雇用主が多くあった、というのが現実)技能実習生の受入=まだ国に帰らないで引き続き日本で働いてもらう、ということが現状ではこの資格のメイン。よって、こうした大いなる矛盾を抱え、今後どうなっていくか様子見の状態である。なお、特定技能2号のさらに熟練者が、通常の在留資格である技術や技能であって、2号からこれらの在留資格へ進んでいく、という位置付けになると思われる。
なお、特定技能1号の外国人を雇用する会社が、空港への送り迎えや、家の保証人になる、といった、外国人の生活の面倒や相談にのれる、いわゆる総務にかける人手や時間・ノウハウがない、という場合にはアウトソース先として、登録支援機関との契約が可能である。余談だが、この登録支援機関にかかる付加が相当なものであり、しかも相談の担当者の要件がかなり厳しく、技能実習の監理団体経験機関、又は行政書士が責任者とならなければ、容易には取れない=新規参入は難しい、ものとなっている。
又、技能実習を終了した外国人が、特定技能での就労準備をする間、次に説明する「特定活動」の資格を取得して、最長4ヶ月まで、日本に引き続き在留することが可能である。
特定技能創設の経緯や手続きの説明はこちら
通常の在留申請のカテゴリーの要件は満たさないが、在留を特別に認めてあげよう、というのが特定活動という資格である。他のカテゴリーにはまらないものがどんどんこのカテゴリーに追加されたので、今では全部で現在13種類があり、それぞれの要件が全然違う。学生がワーキングホリデーやインターンシップで短期間日本の企業で働きたい、母国で一人残された親が病気になってしまったので一時的に日本で面倒をみたい、介護福祉士になるための準備期間に日本に滞在する場合、などなど。これに、上記のような技能実習から特定技能に移行するための職探しその他の準備など、3ヶ月程度の資格の穴埋め的な要素がこの特定活動にはあった。
この特定活動に、今年5月より、中長期の在留資格の一つとして認められるような活動が加った。それが特定活動13として、法務省の在留の資格のページにも載っているもの(以下参照)。これは、日本の大学や大学院を卒業した外国人に、サービス業や製造業での勤務を認めるものである。申請者が扶養する家族の滞在も同じカテゴリーの中で認められている。サービス業、製造業では、本来なら一般的な就労の技術・人文・国際は当てはまらなかったので、それを無理やり「翻訳をやっている」「外国人でしかできない」という要件にはめて雇用していたのであるが、今回の追加で、無理やり枠にはめずに勤務することを認めたものである。ただし、大学卒業以上、日本語N1という要件があるため、実際には優秀な外国人であり、日本にとっては必要な人材である。こういう人材に合法的に在留資格を許可して雇用できることで、ほっとしている企業もかなりあるのではと想像する。ただ、この在留要件を特定活動の枠に入れると、なんでこれが特定活動なのかの説明が難しい。「一般就労」のような呼び名にして、一つの在留資格とした方がわかりやすいと思う。
上記新たに加った特定活動についての趣旨や詳細な要件はこちら
日本で持っている在留資格とは違う活動で、それが収入を伴う場合に申請するもの。1. 学生や家族滞在などの在留資格者が企業に勤務する、2. ライブで収入を得るために興行の資格を取得しているがワークショップやセミナーをやって収入を得るなど、a. 本来の資格では就労は認められない場合、b. 本来の資格とは違った形で収入を得る場合、に申請する資格である。本来の資格での活動を邪魔しない範囲の活動でなければ認められないため、勤務時間は週に28時間まで、又は資格外で勤務する時間が本来の業務時間より少ない場合に限定される。この資格は、在留資格を認められ、来日した後でないと申請ができない。まあ、いわゆる、学生の資格を持つ外国人がコンビニその他の店員のアルバイトする時にこの資格をとって勤務するのであるが、実際には勤務の方が本来の資格よりメインになっている外国人もいるであろうことは明か。が、今やサービス業で外国人は欠かせない労働力であり、こういった事情から、上記の特定技能や特定活動での外国人のサービス・製造業での勤務を認める動きへ繋がっていったわけである。
申請書や要件はこちら
在留の資格の中でも言葉だけでは想像がつかない3つの資格について書いてみた。今後これらが名前を変えていくのか、もっと名前だけではわからないスペシャルな資格が増えてしまうのか、今後の動向に注目である。