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国のデジタル・オンライン化とマイナンバーの活用

先日都の書士会で「デジタル手続法と電子申請の今後」という、書士会にしては珍しいタイトルのセミナーがあったので、Zoomで参加してみた。もちろん、行政書士のメイン業務は、官公庁への書類の提出の代理ってのがそもそもの業務なので、国がデジタル化やオンラインでの手続きを進めれば、直接我々の業務にも関係してくる。今まで紙で提出、連絡は電話とFaxというおよそ信じられない手段でコミュニケーションを取っていた官公庁のデジタル化が進んでくれれば、こんなにありがたいことはない。講師として説明してくださったのは野村総研の梅屋真一郎様。膨大な資料だったので、かなり短くまとめさせていただいた。

1. なぜ今デジタル化を進めるのか

このコロナ禍優先すべき施策はたくさんあるのに何故デジタル化を進めるのか、という声もあるが、実際には、コロナによる緊急対応で手続きに関して混乱が生じたために、早急にデジタル化を進めなければならなくなったというのが実態のようだ。

例えば、特別定額給付金や持続化給付金という、コロナ禍で受付を開始した給付金について、オンラインの手続き自体に不具合が発生して、審査にかなりの時間がかかり、よって給付も遅れた。また、申請手続きのほとんどが電子申請ではなかった点。私も実際に申請をしたのだが、必要事項はオンラインで入力するものの、書類は画像データのアップロード。必要書類が細分化されていて、書類を一つ一つ別にスキャンしてアップロードすることを要求されてはあ?であった。面倒なので必要書類全部一度にスキャンして同じものを7回ほどアップしたがそれでも十分手間だった。ここはPDFをそのまま一度添付すれば済むはずで、無用な労力。東京都の家賃補助は、こういった手続きを経てやっと申請終わったーと思ったら、その金額がたったの2万5千円だったときは、流石に脱力だった。

そのほか、学校が臨時休校しても、オンライ教育の基盤がないこと、区の保健所から東京都へのコロナ感染者の報告に使われていたのがFAXだったために、数や症状の把握に時間がかかったこと、せっかくマイナンバー用のポータルがあるのに、カード自体の普及しておらず、迅速な給付等に支障がでたケースもあるという。

ということで、菅政権になってからデジタル庁の発足によりハンコ廃止やマイナンバーを基盤としたデジタル社会の構築の動きが加速しているのは、今の時代背景を考えると、むしろ必然だったようだ。

2. 施策

デジタル化については、昨年施行されたデジタル手続法以外にもIT基本法、個人情報保護法、番号法など関連法の改正が必要なため、今年度内に実現・開始を予定している施策はそれほどない。(1) 年末調整・確定申告手続きにおけるマイナポータルを介した入力の簡素化、(2) マイナポイントによる消費活性化策の実施、マイナンバーカードの普及やキャッシュレス決済の拡大、などが近々で予定されている施策である。ここまでだと正直言ってあんまりメリットが感じられない。

また、デジタル手続法による行政のデジタル化に関する基本原則として、

・行政手続きにおける情報通信技術の活用=手続きのオンライン原則、添付書類の撤廃

・デジタル化を実現するための情報システム整備計画

・デジタル・デバイドの是正(情報通信技術利用に必要な能力格差の是正)

・民間手続きにおける情報通信技術活用の促進

などが挙げられている(梅屋氏のPPTの出典:IT総合戦略本部「デジタル手続法概要」)。ちょっとこれだけだと漠然としていて、よくわからない。

3.デジタル手続法の具体的な内容

デジタル手続法による施策は、マイナンバーカードの活用がメイン。(1) 戸籍の附票を利用した国外転出者によるマイナンバーカード・個人認証の利用、(2)住民票・戸籍附票、徐票の保存期間延長、(3) マイナンバーカードと健康保険証の連携、(4)通知カードの廃止によるマイナンバーカードの取得促進、など。現状、マイナンバーは住民票を基礎としているため、国外転出者はマイナンバーが使えず、本人確認の手続きが複雑だったので、戸籍と連携できると便利だと思う。マイナンバーカードが健康保険証として使えるのも、個人情報満載のカード持ち歩きの枚数を減らせるし、便利だとは思うが、個人情報漏洩の危険をどう防ぐか、それをどう我々に知らせるのかは克服すべき重要課題ではないかと思う。

4. デジタル手続法以外の動き

デジタル手続法によるデジタル化の動きだけでなく、政府は、民間企業が行う従業員への社会保険・税手続きについて、オンライン・ワンストップができないか注目しているという。こうした手続きは、企業が一括で行う手続きであるし、行政手続きであるがゆえ、政府として対応しやすい。既に資本金1億円を超える法人は、2020年4月より社会保険・労働保険に関する一部の手続きは、電子申請が義務化されている。よって、対象手続きを特定して、こうした手続きについて電子申請が義務化されていない企業に対してもオンライン・ワンストップ化を一気に進めることは十分可能だと考えられている模様。個人的には、このオンライン・ワンストップ化を全ての企業に義務化しようとすると、この流れについていける企業とついていけない、主に中小企業の取捨選択が進んでしまうので、あまり拙速に進めないほうがいいようにも思う。

また、デジタル庁発足の時に最初に話題になったハンコ廃止=押印廃止の動きであるが、官公庁内でのハンコや、とりあえず書類に求められる押印などの廃止は迅速に進められているらしい。その実現はかなりのスピードであると、行政書士会の幹部も別の機会に言われていた。が、登記書類に押す実印や、本人確認のための印鑑証明書などが廃止されるのは、相当先になるらしい。そりゃそうだ、今登記されている会社の実印、本人の実印を全部電子に変えようとしたら、どれだけのインフラと手間がかかるかわからない。

各省庁によって、オンライン申請ができるもの、できないものが色々あるが、今後はオンラインの利用率を上げていくとのこと。例えば、出入国管理庁の申請取次の資格者による申請の時間予約申し込みは、つい先日までFaxだったのだが(そして、Fax番号が今まで使われてない番号だと、職員から確認の電話が来るという恐ろしくも申し訳ない仕組みだった)、やっとオンラインになった。こういう昭和のプロセス踏襲的なところがオンライン化されていくと、関わる職員もこちらも手間と時間の大幅な節約になるので、どんどん進めてもらいたい。

補足 – 個人情報

マイナンバーカードについては、その番号やチップの情報が漏洩したときの危険や、政府に個人情報を把握されて、動きが取れなくなるんじゃないかという議論が前からなされていて、今回の健康保険証との連携についても、一時期話題になった。この件について、梅屋氏は、そもそも政府は個人情報を把握したいとは思ってないから心配するには及ばないとおっしゃっていた(記憶が曖昧なので、ちょっと表現が違うかもしれないが)。個人的には、システムのセキュリティはしっかりしてもらいたいが、たとえ個人情報を把握されても仕方ないんじゃないかと思っている。アメリカやイギリスでも、ソーシャルセキュリティナンバー(社会保険番号)みたいなものが一人ひとりにふられていて、その番号で個人認識をして、官公庁やそれに類する団体での申し込みがスムーズにいく。日本の官公庁は、縦割りなので、なかなか手続きの一元化が進まないが、オンライン、デジタル化を進めるにあたっては、マイナンバー及びそのカードの活用はある意味通らざるを得ない道ではないかと思っている。

 

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