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日本の移民政策と入管法

最近日本の在留申請、アメリカのビザ申請に関するお問い合わせを受けていて、色々と思うことがあるので、それを書いてみたい。

昨年くらいから外国人からのお問い合わせで多いのが「リタイヤした後に子供や孫と一緒に日本に住みたい」「母国で仕事を持ったまま日本に住みたい」といったもの。円安が続いているので、住んでいる国に比べて物価が安いんだろうと思っているのだろうし、多分、一昔前に流行った、日本人がリタイヤしたら東南アジアで余生を過ごせば安く上がる」と考えて、タイやインドネシアに住もうとする人たちのプランと似ている。失われた30年、特にアベノミクスの大失敗のため、日本の円は海外のどの通貨と比べても弱くなっていて、今や東南アジアの人たちが日本に遊びに来る状態なので立場逆転、海外の人が安く上がるから日本に住みたい、と思うのも仕方がないとは思う。ただ、そういう外国人の人たちにあらかじめ理解しておいてほしいのは

(i) 日本は基本的に移民排除の国であり、労働不足によって一時的な労働力としての移民受け入れはあるものの、移民を歓迎する政策はとっていない。高収入の外国人の観光目的の滞在、1,000万円以上収入があるリモートワークを一時的に受け入れる在留資格はあるが、リタイヤしてのんびりお金を使わずに過ごしたい人向けの在留資格は現状存在しない。

(ii) どの国も自国にメリットがなければ、基本的に移民を受け入れることはしないし、日本も例外ではない。リタイヤ組もリモートワーク組も、所得税その他国からすれば多く取れる税金を払わないので、受け入れてもそれほどメリットはない。日本は安全で日本人は親切かもしれないが、在留するとなると歓迎はされないのである。

そもそも観光ビジネスが収入源の国は、コロナ禍で観光客が激減したことに関する妥協としてデジタルノマドを受け入れるようになったが、それは、あくまでも妥協であって、だからこそ、デジタルノマドには期限があるのである。日本も他国の真似をしてデジタルノマドの制度を作ったものの、①今の仕事で年収1,000万以上出歩ことの証明、②健康保険は自国で入ってくる、③期限は半年。更新はできず、取得後6ヶ月以上経ってからの再申請のみ可能、とハードルは高い。

もし日本での就労に関係ない在留資格で日本に住みたいなら、A. 自分で500万円以上の資本金をかけ、会社を立ち上げて、プロフィットを上げ、日本経済に貢献するか、B. 日本人と結婚して日本人の配偶者として在留する、の選択肢を取るしかない。

日本の移民政策がわかりにくい理由の一つとして、割と1本筋が取っていたはずなのに、安倍政権時代に高度人材ポイントだの、国に帰ってもらうべき技能実習生を日本に居続けて働かせる特定技能だの、ベタベタと後から貼り付けたようなものになって制度が柱を失ってしまったことがあると思う。特定技能制度について語ると長く続く自民党政権批判になって止まらなくなるのでここでは我慢するとして、2012年に始まった高度人材ポイント制は、そろそろ大幅に改訂した方がいいのではないかと思う。

そもそもこの制度、欧米人に日本に長くいて欲しいから作った高学歴高収入優遇制度と聞いているが、実際に使っているのは中国人他のアジア人であり、出入国在留管理庁の発表によると、なんと2023年には中国人の使用者が65.7%を占めている。2025年の今はもっと増加しているだろう。多分、欧米人はエクスパットとしてくる時から破格の高収入だったり、待遇も良いので、別に細かい要件を満たさないといけない高度人材ポイントを利用する必要がないんだろう。

そして、この高度人材ポイントのメリットの一つとして、70点以上取得したら3年後、80点以上取得したら1年後に永住申請ができることだ。10年以上の日本への継続的在留が要件であるところ、最短で1年住んだだけで永住申請し、通れば今のところその後要件を満たすかどうかの検査もないまま永住できてしまうのである。要約すると、この制度によって、日本は中国人が日本に永住するための早道を作ってあげているようなものである。これでいいのであろうか?

で、このポイントなのであるが、世界ランク300位以内の大学や大学院を卒業し、若くて人よりちょっと良いサラリーを得ていれば、70点くらいは軽い。今や世界標準から考えても全然高収入ではない年収700万円以下でも80点取るのは難しくない。日本語が全く喋れなくても他の箇所でポイントを取るのは容易。高度ではなく、中度くらいであって、それほど優秀でなくても利用は十分可能である。

最初の意図と違っているのであれば、早々に改定すべきであって、それは外国人差別でもなんでもない。この優遇は、長く日本に住んで、まあまあの賃金で働いて税金をきちんと納めている(中国人をもちろん含む)そのほかの外国人に対して失礼な制度とも言える。早々の改定を求めたい。

日本の入管の制度は、ビザと在留資格という二本立てになっていて、ほとんどの外国人はその違いがわからず、最初の説明がこのこと一つだけでも面倒である。そして、その次にややこしいのが、要件を満たしているだけでは在留申請はおりず、審査官の裁量によって、可否が決まったり、必要書類を提出し、要件を満たしているはずなのに、追加の資料を要求されることである。

実際に入管法(正しくは、出入国管理及び難民認定法・同法施行令・同法施行規則)にも、「法務大臣の裁量」「審査官の裁量」などという文言があり、そのことが許可・不許可の理由にベールをかけている。本来なら、裁量ではなく法規ではっきりと定めるべきではないかと思うようなところにも、この文言が使われている。オーストラリアなどは、オンラインで募集したい仕事内容と要件が詳細に書かれており、自分がそれに見合うかどうかを判断してオンライン申請すればすむと聞く。もちろん、申請取次を業務にしているプロとしては、その裁量という漠然とした空間でどう攻めるか、手続きがややこしいからこそ代理で申請して報酬を請求できるというメリットがあることは否めない。だが、人種や出身国によって明らかに審査期間が違ったり、審査官が要求してくる内容が違うのを見ると、いちいちそれを申請者に説明するのも面倒であるし、その裁量の広さを素直に受け入れられないのも事実。また以前、一回だけ在留申請が拒絶された時に、後からクライアントに審査官が「御社からの次回の在留申請はどんなことがあっても許可しない」と言っていたと聞いて、裁量もここまでいくとどうしたものだろうと頭を抱えたこともある。アメリカのビザの制度もやはり審査官の心証だったり、裁量の部分が大きく、だからこそ、代理する移民弁護士の実力によって可否に差が出てくる。そもそもアメリカなんて移民なくして国は成り立たなかったわけであり、それは今の日本も同じで、外国人の労働者なしでは続けていけない業界も多いので、ベールに覆われた謎の部分をもう少し、第三者からみてわかりやすい制度に変えていく時期ではないかと思う。

今日から春節が始まり、いつものように中国人が押し寄せてきている。が、東京の地下鉄は随分前から空いている時間帯や曜日もなく、一旦降りて待つことを知らない外国人観光客(国に関わらず)が降りる人間の道を塞いでラッシュアワーがますます混乱したり、常に外国人観光客が浅草あたりから乗って座っているので、どれだけ疲れていても、乗車中に座れる可能性はとうに諦めている。また、ここ2,3年で私が住んでいる台東区に在留(及びマンションを短期貸し)する中国人がかなり増えているようで、彼らの団体行動で道を塞がれたり、スーパーでの買い物を邪魔されたりしている。中国人の流入は隣の文京区も同じらしく、このままでは多分中国人とマナーを知らない外国人に占拠され、疲れた住民が逃げていくことが考えられる。前からおとなしく住んでいる(中国人を含む)外国人を追い出すつもりも差別する気もさらさらないが、今来ている観光客は、安物を買って、安いホテルに宿泊し、コンビニの前で立ち食いするような層であり、この層の観光客が増えたからといって国が潤うはずがない。間違った移民政策、オーバーツーリズムは一刻も早く改善してもらいたい。

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