契約書の作成やレビュー依頼を受ける時に「ネットにある契約書の雛形を使ったので、レビューしてください」と言われることがある。ご依頼には、雛形を使ったので問題はない、という前提があり、一応当社のパターン当てはまるか、空欄を埋めたので見て欲しい、というような趣旨である。ネットにある情報はそれがマスメディアからの発信でない限り信用に足りるものは少ないのは知られていることだが、なぜ契約書という大事なものをネット情報を基に作るのだろう・・、と思いつつ、「確認しますので、お待ちください」と返事をする。もちろん、他の情報と同じで、無料でダウンロードできるものなのだから、レベルは推して知るべし、必須の文言が足りなかったり、必要ない文言だけやたらに長かったりで、それをそのまま使えるわけはない。こういう依頼をいただく側からすれば、全く信用できないものを最初から最後までレビューするより、今まで自分が作った契約書を基にした雛形を使って契約書を作る依頼の方が、正直手間も時間もかからないので、請求金額もそのほうが安いくらいである。
弁護士のサイトだから大丈夫?- いやいや、弁護士という肩書きがついていても、企業法務や契約書作成を業務にしていない人に、契約書が作れるわけはない。有料ページへの導入のために、例えば簡単と思われる秘密保持契約書がダウンロード可能になっている、というようなパターンもあるが、秘密保持契約書こそ、会社によってパターンが違ったり、当事者の力関係で変えるべき文言満載な契約書なので、雛形そのままで使えない契約書ナンバーワンかもしれない。
話がぶっ飛んで恐縮だが、最近信用できないサイトの輝けるNo. 1として表彰してあげたい、と思ったのが、大島てるの事故物件公示サイトである。これから住むマンションを探しているという女性に教えてもらったのだが、どこぞのマンションで人殺しがあったとか、飛び降り自殺があったとかの情報を掲載しているサイトである。サイトの開設は2006年(それより前の情報はほとんど掲載されていないであろう)、2011年からは投稿サイトになっているため、新聞その他のエビデンスなしで誰でも投稿でき、サイト運営者はその情報の信憑性について確認していないため、サイトのトップページには削除要請が並んでいる、大迷惑なサイトである。ご本人は人が嫌がっていることをやる意義を感じているそうだが、そういう表面に出てこない事故物件を知らせるためのサイトなら病死を掲載する必要はないし、情報を売りにして有料セミナーをやったり、ご本人を正義の味方よろしくメディアが持ち上げている意味がよくわからない。信憑性が低い情報を掲載すれば、それが一人歩きして、マンション全体が間違った情報の犠牲となる。突然やってくるなりすましかスパムよろしく、ある日突然何も起きていないマンションが事故物件として出回るのである。住居地が限られている日本で、人が亡くなっていない土地やマンションなんて果たしてあるんだろうか?
ネットの情報が信用できないだけでなく、最近ではユーザー行動を基にしたネット広告というものも胡散臭いし、邪魔な存在であるという印象を持った。先日自分が発信元の情報を確認すべくネットで検索してその情報に行き着いた。が、それ以来、その情報を購買に結びつけようとする広告が、色々なところにポップアップで現れるようになった。私は売りたい情報を持っている本人なので、買うわけがないのだが、ビッグデータ(またはAIと呼ぶのか)は本人であることを確認できないから、一生懸命広告を私に見せるのである・・こういう、本人に承諾を得ない、本人情報を使用した広告も、GDPRの登場で今後規制対象になるのではと思っているが、広告という名のウィルスにしか思えないのである。
長い間ネットの恩恵に預かってきて、ネットアディクト(ネット中毒者)と自分を呼んでいたのだが、そろそろアディクト卒業の時期かもしれない。